四肢麻痺、対麻痺の患者で有用な膀胱直腸機能の回復を得、カテーテルを必要としない状態を得ることはきわめて重要なことである。
カテーテルによらなければ排尿できない状態は繰り返し感染の危険にさらされ、また過度の自律神経異常反射(末梢性刺激なかんずく膀胱膨満により誘発される)は発作性高血圧、徐脈、体温調節を伴わない発汗の原因となる。仙髄がどの程度健存しているかを調べることにより、どの程度機能回復が起こりうるかを推定することができる。
通常膀胱神経支配とその中枢機構が温存されておれば排泄機能は急速に正常に戻る。たとえ一部に機能障害があっても遺残する神経障害は訓練により補うことができ、かなり急速に有用な機能を得ることができる。
不完全損傷:
不完全損傷でも種々の程度の膀胱直腸障害をきたしうる。母しの屈曲が可能で肛門周囲の知覚が正常でしかも肛門括約筋の随意収縮が認められれば、膀胱直腸を支配する全仙骨神経はおそらく温存されており、随意的な膀胱直腸機能は、急速に通常数日以内に回復する。
肛門周囲の知覚は正常に保たれているが、肛門括約筋の随意収縮は認められない場合には仙髄は部分損傷を受けており(部分的仙髄健存)、膀胱直腸機能は一部しか回復しない可能性がある。
完全損傷:
仙髄健存がなく完全損傷の場合は膀胱直腸機能は大きな障害を受ける。第1の場合は母しの屈曲が不能で、肛門周囲知覚が脱失し、しかも括約筋の随意収縮が見られない場合で膀胱直腸機能の中枢支配が恒久的に失われていることを意味する。
第2の場合は肛門反射や球海綿体反射(亀頭部をつまみ刺激を加えると肛門括約筋が収縮する)が存在する場合で膀胱および直腸の反射支配は保たれていることを示す。暴行は反射により収縮できることが予想され、直腸は糞便やグリセリン浣腸の刺激によって反射がおこり、排便することができるであろう。
初期の脊髄ショックの時期が過ぎてもなおかつすべての反射が消失していて、そのため弛緩性膀胱、便秘、あるいは腸閉塞をきたすことはまれである。
弛緩性膀胱では反射性収縮がおこらないので導尿もしくは下腹部の用手圧迫による排尿が必要である。排便は浣腸、稠厚便の場合は用手摘便が必要である。弛緩期が過ぎると膀胱は反射性に収縮しはじめ、患者は反射を利用する訓練により排尿ができるようになる。
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