脳梗塞(脳出血・くも膜下出血)の障害厚生年金

脳梗塞(脳出血・くも膜下出血)の障害厚生年金の申請

文責 社会保険労務士 松井 宝史 2020.01.17

脳梗塞とは

脳梗塞は、脳の血管が詰まってしまい、その先に十分な血液が流れなくなる、血流が途絶えるタイプの病気です。

脳梗塞が起きると、脳細胞に血液が流れて行かなくなることで、その血管が血液を送っていた領域の部分が、酸素不足、栄養不足の状態に陥ります。

この状態が長く続くと、その領域の脳細胞が壊死してしまい、その細胞が担っていた脳の機能が障害されてしまいます。

脳梗塞で会社を休む場合

お勤め中のご主人がもし脳梗塞になって、会社を休むようになったらどうしたらいいでしょうか?

病院に入院し、治療を受けるような状態になったら、奥さんやご家族は看護に付きっきりになってしまいますよね。

まずは会社の総務担当に傷病手当金の手続きについて聞いて下さい。欠勤4日目から傷病手当金の給付が出るようになっています。もらえる金額はおおよそいつもの給与の3分の2となっています。

会社の給与の締め切り単位で毎月請求していくことになります。最長1年6か月までの給付となっています。

入院しているご主人がリハビリ期に入ると、しばらくはそのまま入院しながらリハビリを進めていきます。

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脳梗塞の症状

脳梗塞の症状は、壊死した脳細胞の場所によって違ってきます。

言葉の障害、視野の障害、身体の麻痺の障害、嚥下障害、その他の高次脳機能障害が出てきます。

リハビリをきっちりやって早く会社に復帰できるようになりたいものですね。

重い後遺症が残った場合は、障害厚生年金の請求をすることになります。

障害年金の請求は、請求する方やそのご家族の方を社会保険労務士など専門家が援助しないと前に進まないことがあります。

ご主人が自営業などで厚生年金に加入していない場合は、障害基礎年金の請求をすることになります。

国民年金の保険料がちゃんと納まっているかも大事な要素となってきます。

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初診日

脳梗塞の初診日がいつかがスタートとなります。その日を基準にして手続きが進んでいくことになります。

障害認定日というものがあり、障害の程度を定めるべき日のことを指します。障害の原因となった病気、ケガ(今回は脳梗塞ですが)について、はじめて病院にかかった日(初診日)から1年6か月を経過した日のことです。

例外としてその期間内に脳梗塞が治った日(症状が固定した日を含む)となっています。

障害認定日を確定させるためにも、初診日というものが大事になってきます。この初診日を確認するために初診の病院で「受診状況等証明書」を書いてもらうことになります。

「受診状況等証明書」の⑤発病から初診までの経過の箇所で「前医からの紹介状はありますか」を記入することになっています。ここで前医がある場合は、前医の病院でもう一度「受診状況等証明書」を書いてもらう必要があります。

総合病院などで、救急外来で受診し、脳梗塞を専門で診る先生がいなくて、その他の科の先生が診てくれた時は、その科の先生に説明してもらうことになります。

保険料納付要件(保険料がきっちり納めてあるか)

初診日が確定すると、今後は保険料納付要件が大事になってきます。公的な障害年金は、きちんと保険料を納めることが受給要件の一つとなっています。

まず、障害基礎年金の場合は、下記のようになっています。

初診日が20歳未満である場合を除き、初診日において、国民年金に加入しているか、加入を終えた後でも60歳以上65歳未満で日本国内に住んでいることが必要です。

65歳を過ぎている人は該当しません。

それに加えて、初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの国民年金に加入しなければならない期間のうち、3分の2以上の期間が保険料を納めた期間または保険料を免除された期間のいずれかであるという保険料納付要件を満たすことが必要となります。

上記の「国民年金に加入しなければならない期間」からは、海外在住の日本人が国民年金に任意加入できるのに任意加入しなかった期間などの「カラ期間(合算対象期間)」は除かれます。

合算対象期間はここを参照してください。

保険料を免除された期間は、全額免除のほか、4分の1免除、半額免除、4分の3免除および納付猶予制度または学生納付特例による保険料猶予の月数を合計したものとなります。

尚、上記の3分の2の条件を満たせなくても、2026年4月1日前に65歳未満の初診日があるときには、初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納期間がなければ障害基礎年金が支給されます。

実際の実務では、まず初診のある月の前々月までの1年間の保険料納付の確認をすることになります。

障害厚生年金の保険料納付要件

障害厚生年金の場合は、下記のようになります。

厚生年金保険に加入している間に脳梗塞の初診日があり、障害基礎年金の1級または2級に該当する障害基礎年金に上乗せされる形で、障害厚生年金1級、2級が支給されます。

障害の程度が障害基礎年金1級、2級に該当しない場合でも、障害等級表の3級に該当する障害の状態になったときは、障害厚生年金3級が支給されます。また、厚生年金に加入している間に脳梗塞になり、5年以内に治り(症状が固定した場合を含む)3級の障害よりやや軽い程度の障害が残ったときは、障害手当金(一時金)が支給されます。

障害厚生年金または障害手当金を受けるためには、障害基礎年金の保険料納付要件を満たしていることが必要となります。

障害厚生年金になるかどうかは、脳梗塞になり初めて病院に行った初診日が厚生年金保険に加入していたかどうかが決め手となります。

障害認定

次に重要なのは脳梗塞になって残った障害がどの程度かということです。

脳梗塞によってどの部位の脳細胞が壊死したかによって、残る障害の部位や程度が変わってきます。

・失語症


しゃべるのがうまくいかなかったり、相手の人がしゃべっているのを理解できなくなる症状です。音声又は言語機能の障害となります。

認定基準

音声又は言語機能の障害については次のとおりです。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

2級

音声又は言語機能に著しい障害を有するもの

厚年令別表第1

3級

言語の機能に相当程度の障害を残すもの

厚年令別表第2

障害手当金

言語の機能に障害を残すもの

音声又は言語機能の障害とは、発音に関わる機能又は音声言語の理解と表出に関わる機能の障害をいい、構音障害又は音声障害、失語症及び聴覚障害による障害が含まれます。

2級の「音声又は言語機能に著しい障害を有するもの」とは、発音に関わる機能を喪失するか、話すことや聞いて理解することのどちらか又は両方がほとんどできないため、日常会話が誰とも成立しないものをいいます。

3級の「言語の機能に相当程度の障害を残すもの」とは、話すことや聞いて理解することのどちらか又は両方に多くの制限があるため、日常会話が互いに内容を推論したり、たずねたり、見当をつけることなどで、部分的に成り立つものをいいます。

障害手当金の「言語の機能に障害を残すもの」とは、話すことや聞いて理解することのどちらか又は両方に一定の制限があるものの、日常会話が互いに確認することなどで、ある程度成り立つものをいいます。

障害手当金の「言語の機能に障害を残すもの」とは、話すことや聞いて理解することのどちらか又は両方に一定の制限があるものの、日常会話が互いに確認することなどで、ある程度成り立つものをいいます。

失語症については、失語症の障害の程度を評価の参考とします。

失語症の障害に程度は、音声言語の表出及び理解の程度について確認するほか、標準失語症検査等が行われた場合はその結果を確認します。

失語症が音声言語の障害の程度と比較して、文字言語(読み書き)の障害の程度が重い場合には、その症状も勘案し総合的に認定されます。

音声又は言語機能の障害(特に構音障害)と、そしゃく嚥下(えんげ)機能の障害とは併存することが多いが、この場合には併合認定の取り扱いが行われます。

また音声又は言語機能の障害(特に失語症)と肢体の障害又は精神の障害とは併存することが多いが、この場合についても併合認定の取り扱いが行われます。

併合(加重)認定

併合(加重)認定は、次に掲げる場合に行われます。

障害認定日において、認定の対象となる障害が2つ以上ある場合(併合認定)

「はじめて2級」による障害基礎年金又は障害厚生年金を支給すべき事由が生じた場合(併合認定)

障害基礎年金受給権者及び障害厚生年金受給権者(障害等級が1級若しくは2級の場合に限る)に対し、さらに障害基礎年金または障害厚生年金(障害等級が1級若しくは2級の場合に限る)を支給すべき事由が生じた場合(加重認定)

併合認定の制限

同一部位に複数の障害が併合する場合、併合認定の結果が国年令別表、厚年令別表第1又は厚年令別表第2に明示されているものとの均衡を失する場合には、明示されている等級を超えることはできない。

運動麻痺

一般的に大脳で損傷を生じた場合には、反対側の麻痺が生じます。麻痺は一般的に顔面、のど、上肢、体幹、下肢すべてに及びます。

肢体の機能の障害

認定基準
肢体の機能の障害については、次のとおりです。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

国年令別表

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

厚年令別表第1

3級

身体の機能に労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

 

認定要領
肢体の障害が上肢及び下肢などの広範囲にわたる障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの脳血管障害など)の場合には、上肢の障害、下肢の障害、体幹、脊柱の機能の障害に示されたそれぞれの認定基準と認定要領によらず、肢体の機能の障害として認定する。

肢体の機能の障害の程度は、関節可動域、筋力、巧緻性(こうちせい)、速さ、耐久性を考慮し、日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定します。
なお、他動可動域による評価が適切ではないもの(例えば末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性(しかんせい)の麻痺となっているもの)については、筋力、巧緻性、速さ、耐久性を考慮し、日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定します。
各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりです。

障害の程度

障害の状態

1級

  1. 一上肢及び一下肢の用を全く廃したもの
  2. 四肢の機能に相当程度の障害を残すもの

2級

  1. 一上肢及び一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの
  2. 四肢に機能障害を残すもの

3級

一上肢及び一下肢に機能障害を残すもの

肢体の機能の障害が両上肢、一上肢、両下肢、一下肢、体幹及び脊柱の範囲内に限られている場合には、それぞれの認定基準と認定要領によって認定されます。

なお、肢体の機能の障害が上肢及び下肢の広範囲にわたる場合であって、上肢と下肢の障害の状態が相違する場合には、障害の重い肢で障害の程度を判断し、認定することになっています。

日常生活における動作

日常生活における動作と身体機能との関連は、厳密に区別することができないが、おおむね次のとおりです。

ア 手指の機能
(ア) つまむ(新聞紙が引き抜けない程度)
(イ) 握る(丸めた週刊誌が引き抜けない程度)
(ウ) タオルを絞る(水をきれる程度)
(エ) ひもを結ぶ

イ 上肢の機能
(ア) さじで食事をする
(イ) 顔を洗う(顔に手のひらをつける)
(ウ) 用便の処置をする(ズボンの前のところに手をやる)
(エ) 用便の処置をする(尻のところに手をやる)
(オ) 上衣の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ)
(カ) 上衣の着脱(ワイシャツを着てボタンをとめる)

ウ 下肢の機能
(ア) 片足で立つ
(イ) 歩く(屋内)
(ウ) 歩く(屋外)
(エ) 立ち上がる
(オ) 階段を上る
(カ) 階段を下りる

なお、手指の機能と上肢の機能とは、切り離して評価することなく、手指の機能は、上肢の機能の一部として取り扱う。

身体機能の障害の程度と日常生活における動作の障害との関係を参考として示すと、次のとおりです。

ア「用を全く廃したもの」とは、日常生活における動作のすべてが「一人で全くできない場合」又はこれに近い状態をいいます。

イ「機能に相当程度の障害を残すもの」とは、日常生活における動作の多くが「一人で全くできない場合」又は日常生活における動作のほとんどが「一人でできるが非常に不自由な場合」をいいます。

ウ「機能障害を残すもの」とは、日常生活における動作の一部が「一人で全くできない場合」又はほとんどが「一人でできてもやや不自由な場合」をいいます。