近年、職場のストレス等によって引き起こされた適応障害やうつ病などで会社を休職する人が増えています。
民間会社のサラリーマンをはじめ、公務員、学校の先生など、新聞報道などを見ていると精神疾患で多くの方が休んでいます。
私の自宅近くのメンタルクリニックの駐車場は、いつも車でいっぱいです。
私の事務所でも、顧問先の従業員の適応障害などの精神疾患の傷病手当金の申請が増えてきました。
治療がどうしても長引くので、半年とか1年単位で傷病手当金の申請をしています。
個人の方からの傷病手当金申請依頼も増加傾向にあります。
「ホームページを見たのでお願いします」という方や、弁護士先生からの紹介でパワハラで適応障害やうつ病になったので労災保険の申請と一緒に傷病手当金の申請を依頼されることも多くなっています。
「適応障害で傷病手当金がもらえない」という相談もあります。
適応障害で休職をしているが、復職する気はなく、転職活動をしたいという方も多くいらっしゃると思います。
前の職場に戻れば、また病状が悪化すると感じる方もいます。
休職中に転職活動をすることは、とてもいいことだと思います。
休職中に転職活動をしてはいけないと思い込んでいる方もいらっしゃいますが、そんなことはありません。
休職中に求人情報を集めてみようと思うのは自然な流れです。
確かに休職というのは現在の会社に籍を置き、復職を前提として休んでいる状態です。
ですが転職を視野に入れている方にとって休職期間というのは、在職中にまとまった時間を取ることができる絶好の機会です。
ただし、転職活動は非常にエネルギーを消費しますので、メンタルクリニックの主治医の先生と相談しながらゆっくりと少しずつ進めていくことが大事です。
適応障害になった場合、最初の時期は何もする気がおきないと言われています。
食事をするのもままならない時期もあると思います。
そんな時期が過ぎて安定期に入ると、少しずつ気持ちが上向きになってきます。
そのような時期になったら、主治医の先生に転職活動を始めたいことをお話しし、許可が出てからスタートさせましょう。
履歴書や職務経歴書をまとめるにも相当エネルギーがいります。
できることからゆっくりやっていきましょう。
焦る必要はありません。急がば回れです。
休んでいる間は、健康保険の傷病手当金の申請を会社にお願いしてください。
今までの給与のおおよそ3分の2が支給されますので、とりあえずの生活費をまかなうことができます。
傷病手当金の申請も、病院に1か月に1回は通院しないと申請ができない場合があります。
次の通院日がいつか分かるようにカレンダーなどに印を付け、忘れることがないようにしましょう。
会社の就業規則によっては、ある一定期間の休職期間が過ぎて復職できない場合は、会社を退職することになります。
適応障害やうつ病の治療には長い時間がかかります。
会社の就業規則で勤続年数の長さを基準に休職期間の長さが決められている場合が多いです。
勤続年数の短い人にとっては厳しいことになります。
傷病手当金の病院の証明がもらえたら、会社に書類を送付する時に、総務の担当者に休職期間がどのくらいあるかを聞いてみてください。
できれば、就業規則の休職の条文の個所をコピーしてもらってください。
復職の条件なども記載されていますので確認しておきましょう。
休職期間を確認してから、治療を優先しながら転職活動はゆっくりでもいいので一歩一歩進めましょう。
休職した最初の期間は、仕事のことを一切忘れてのんびりする必要があります。
「早く転職先を見つけなくては」などと焦る必要は全くありません。
また、「早く会社に復職しよう」ということも忘れましょう。
気持ちが落ち込んでいる日は無理をしない方がいいでしょう。
転職活動の第一歩として、まずは体調の良い日に情報収集から始めてみましょう。
なんとなく転職サイトをながめることからスタートすればいいのです。
どんな会社が求人をしているのか見てみましょう。
転職サイトに登録しなくても、どのような求人情報があるかは検索して見ることができます。
2,3社の転職サイトを気の向くままに見てみましょう。
あなたがやってみたい職種で見てみれば、たくさんの会社が求人をしているのが分かってきます。
転職先の会社の目星がある程度定まってくると、心に余裕が生まれてきます。
年齢的に若い人であれば、転職できそうな求人情報は比較的豊富にあります。
この会社に転職しても失敗するかもしれないとか、職場に馴染めないかもしれないとか、あれこれ不安になってしまうかもしれません。
しかしどんな会社も、実際に入社してその職場で働いてみないと仕事内容が自分に合っているかは分かりません。
他の従業員の方々とうまくやっていけるかどうかも、入社して実際に働き始めて初めて分かることです。
もし、転職した会社や職場が合わなかったら、また違うところにいけばいいのです。
そのくらいの気持ちでやっていけばいいのです。
日本中に会社は数えきれないほどあります。
その中に、あなたが気持ちよく働ける職場が必ずあります。
あまり自慢できる話ではありませんが、私もそうやって4社転職しました。
20代前半で会社を入社して6か月で退職した後は、さすがに落ち込みました。
でもそれは大変得難い経験だったと思います。
雇用保険の給付をもらうために公共職業安定所(ハローワーク)にも通いました。
その後、6か月間、無職の時を過ごしました。
今思えば、それで正解だったと思っていますし、それぞれの会社で働いて得たスキルや知識は今の社会保険労務士の仕事に活かされています。
治療と休息に専念する時期が過ぎて、気持ちが活動するように上向いてきたら、転職先の会社を探していきましょう。
気持ちが前向きになる日もあれば、落ち込んでしまう日もあります。
気持ちに波があると思いますので、上向きの時だけでも転職活動を進めていきましょう。
気持ちが落ち込んでいるときに転職活動をしても、焦りや不安が邪魔をするだけです。
最初は1日のうち30分だけでも構いません。
あなたの好きな飲み物でも飲みながら、転職サイトをのんびり見てみましょう。
まずは転職サイトに登録して求人情報をチェックします。
転職サイトに登録すると、毎週のように求人情報がメールで送られてきます。
その中で興味があると感じた会社、気になる職種などがあれば、どんどんノートにメモしていきましょう。
とにかくあなたの手を動かして、ノートに書いていくという作業がとても大事なのです。
なんとなく書いていくうちに、気持ちも上向きになってきます。
休職中ですと、つい夜更かしをしてしまったり、朝寝坊をしてしまったりして昼夜逆転してしまいがちです。
しかしそれですと、新しい会社で働き始めるときになかなかリズムを取り戻すことができなくなってしまいます。
できるだけ早寝早起きを心がけ、規則正しい生活をしましょう。
病状が治まってきたら、今までの会社勤務と同じ時刻に起きるようにしていきましょう。
今までの会社の始業時刻に合わせて、例えば朝9時から30分だけ求人情報をチェックする、ということから始めてみましょう。
これまでやってきた仕事の業種や職種にこだわらず、あなたが興味を持った求人情報をノートにメモしていってください。
そうすることによって、思わぬ気付きを得られる場合がありますし、こんな会社や職種があったんだと気付くことがあります。
大手の会社にいた方は、なかなか中小企業に目が向かないかもしれません。
しかし中小企業は社員数が少ないために任される仕事の範囲が幅広くてやりがいを感じられたり、アットホームで職場の雰囲気が良かったり、転勤が少ない等のメリットもあります。
条件があなたに合うのであれば、中小企業であるという点だけをもって応募候補から外してしまうのはもったいないかもしれませんね。
リハビリで働くという意味合いならば、極端な話ですが、アルバイトや派遣社員として働くことも選択肢に入れてみてもいいかもしれません。
その場合は、あなたが今後やっていきたい仕事や今までやってきて好きだった仕事に関係のある職場を選びましょう。
アルバイトや派遣で経験を積んでスキルアップすれば、正社員の職を探す際に役立ちます。
転職先を探すとき、色々な条件があることと思います。
例えば年収は最低いくら以上とか、通勤時間は30分以内など、人によって様々な条件があると思います。
ノートに思いついた条件を書き出していき、その中で優先順位を決めてください。
条件を全て満たす会社で採用されれば素晴らしいですが、たいていの場合はどこか譲歩をしないと決まりません。
社会復帰のリハビリが目的であれば、転職先の会社の給与のことは考えない方がいいと思います。
まずは「働ける」ことの確認ができればどの会社でもいいと考えてみましょう。
そうすれば、気持ちが落ち着くはずです。
大手企業に勤めていた方の中には、中小企業で働くことに抵抗がある方もいるかもしれません。
しかしあなたが気持ちよく働けて、スキルや強みを発揮できる職場が中小企業の中には無いと言い切れませんよね。
確かに年収は下がってしまうかもしれませんが、新しい職場で仕事に励んでいけばあなたの評価が上がり、年収も上がっていく可能性があります。
会社の知名度や規模は一旦置いておいて、まずは就職して収入を得ることを考えましょう。
様々な条件の中でも、自宅からの通勤時間はとても重要な条件です。
例えば会社まで片道1時間30分かかっている人の場合、往復で3時間です。
1日3時間を通勤に費やしていると思うと、勿体なく感じませんか。
また、電車通勤の方の場合は通勤ラッシュの混雑は大変なストレスですし、車通勤の方は渋滞でイライラしますよね。
同じ時間に退勤しても、会社の近くに住んでいる同僚は家族と過ごす時間を作れるのに対し、満員電車に揉まれて帰宅したら子供たちはもう寝静まっているという生活になってしまいます。
通勤時間を短くしたい場合、地元密着の会社選びにお勧めの転職サイトは【はたらいく】です。
家から近い会社で働きたいという条件が優先順位の上位にくるという方は、ぜひ登録してみてください。
昼食を取るために一度帰宅する、なんていうことも可能になれば、毎日外食をする場合に比べて食費の節約にも繋がりますよ。
現在の会社の人間関係に悩まされている方や、上司のパワハラで苦しんでいるという方は、次は人間関係の良い会社に入社したいですよね。
職場のストレスが原因で適応障害やうつ病になってしまったという方は特に、次に入る会社はしっかりチェックしていきましょう。
そのような時は、いろいろな会社の口コミを見てみましょう。
口コミサイトでおすすめなのは、【転職会議】です。
無料で登録でき、口コミが豊富に掲載されています。
転職サイトで求人情報をある程度集めてから登録し、あなたが気になっている会社の口コミを見てみましょう。
口コミサイトは、その会社の人間関係や残業の多さなど、入社してみないと分からない情報が載っているとても役に立つサイトです。
絶対に使わないと損です。
もちろん全ての情報を鵜呑みにしてはいけませんが、もし同じような内容が何件もの口コミに記載されていれば、その情報は確実性が増すと思います。
同業他社の情報を見ていくことにより、あなたが応募してみたいと思っている会社が他社よりも人間関係がよさそうかどうか、比較することができます。
まずは転職サイトで応募したい会社の情報を集めてから、口コミサイトで比較するという手順でやってみましょう。
口コミサイトである程度判断した後は、その会社に応募して職場見学などをお願いして確認をしてみましょう。
自分の目で確認するのが一番です。
心がまだ回復していない場合は、口コミサイトを見ていてもマイナスの情報ばかり目につくので、心が落ち着いてからまた見るようにしてください。
主治医の先生から「会社に面接に行ってもいい」という許可が出ましたら、それから口コミサイトを見てみましょう。
有料職業紹介会社に登録して、転職エージェントの方のサポートを受けるのもお勧めです。
大手転職エージェントは企業と返金保証契約を結んでいることが多く、あなたがすぐに辞めてしまった場合には報酬を企業に返金しなければなりません。
ブラック企業を紹介しても、すぐに辞められてしまっては意味がありません。
ですので、転職エージェントの方もあなたに合った会社を紹介するように心がけています。
また、転職エージェントの方は、転職先の会社の職場環境についても知っている可能性があります。
人の出入りについても情報を持っていますから、人が定着しないブラック企業なのかどうか、転職エージェントの方に探りを入れてみるのもいいでしょう。
まずは信頼できる転職エージェントの方と出会いたいものですね。
あなたが気になったことを質問したとき、すぐに答えてくれる方は信頼できるのではないでしょうか。
転職エージェントの方から次々に紹介があり、急かされているような気持ちになってしまうことがあるかもしれません。
そのような時は、メンタルクリニックの主治医の先生に、働ける状態まで回復したのかどうか判断してもらいましょう。
今の段階ではまだ早いと主治医の先生がおっしゃるようであれば、無理は禁物です。
転職エージェントの方は、自分のノルマのこともあるのであなたに合った会社をどんどん紹介してきますが、何より大事なのはあなたの心身の健康です。
無理をすると、せっかく良くなってきていた症状がまた悪くなってしまうこともあります。
主治医の先生の指示に従い、体調がよくなってから転職活動を進めていきましょう。
エージェント会社でお勧めなのは、【パソナキャリア】です。
総合人材サービスの先駆者的存在なので、採用企業と求人に対する情報量が圧倒的に豊富です。
手厚いサポートが売りで、履歴書や職務経歴書の添削も丁寧に行ってくれます。
転職エージェントの方には、あなたが転職するにあたって譲れない条件をはっきりと伝えましょう。
その条件に合った会社を紹介していただけるはずですし、もしその条件に当てはまらない会社を紹介された場合は、はっきりと断りましょう。
転職エージェントの方が「条件が厳しいので紹介する案件がない」と言ってきたら、あなたにとって優先順位の高くない条件から緩めていきましょう。
転職エージェントの方は転職希望者を多く見てきています。
あなたが転職市場でどのくらいの価値があるか、相談してみましょう。
特に年収条件などは転職エージェントの方が相場感を知っているので、良いアドバイスがもらえるかもしれません。
はっきり言ってくれない場合があるかもしれませんが、どの条件を緩めれば紹介して頂ける案件が増えますか?と聞いてみるとアドバイスがもらえると思います。
休職期間の満了日が近づいてくると焦ってしまいますが、まずは治療が優先となります。
焦ってしまうと、極端に応募条件を下げて、あなたの希望に沿わない会社に入ってしまうこともあります。
休職期間満了で退職となってもいいいと心に決めて、ゆっくり焦らずにやっていきましょう。
傷病手当金を受給している人は、健康保険に1年以上加入していれば、退職後でも傷病手当金が支給開始から1年6か月分申請ができることになっています。
転職活動をして内定をもらったら、本当にその会社でいいのか迷うことも出てくるかと思います。
本当にその会社でいいのかとか、体調がよくなったから今までの会社でも頑張っていけそうとか、迷いが生じてくることかと思います。
そんな時には、転職を経験したことがある友人や知人に話を聞いてもらってください。
友人や知人に話すことによって、あなたの気持ちも迷いが消えてはっきりしてくるはずです。
適応障害の場合は、職場環境が変わらないと再発してしまいます。
復職後の職場異動を願い出てみて、それが受け入れられれば復職もありだと思います。
しかし、大手の会社であれば、4月、10月の異動というように時期が決まっているところが多いため、職場異動もすぐには難しい場合が多いと思います。
職場異動が難しいならば転職やむなしということで進めていきましょう。
そうして新しい会社に転職すると決意したら、まずは同居のご家族に報告し、その後会社の上司に報告をしていきましょう。
適応障害やうつ病での転職の場合、転職してすぐに無理をしてバリバリ働くことは控えましょう。
新しい仕事内容、新しい人間関係に慣れるというのは、心身が健康な状態であっても疲れるものなのです。
学生時代の新年度、新しいクラスに慣れるまでやたらと疲れた記憶のある方も多いかと思います。
あなたは病み上がりなのですから決して無理はせず、睡眠と栄養をしっかりとり、体調と相談しながら少しずつ新しい会社に馴染んでいきましょう。
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文責 社会保険労務士 松井 宝史 2023.01.24
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