確定拠出年金制度の概要
確定拠出年金は、2001年(平成13年)10月から「確定拠出年金法」の施行によって始められました。確定拠出年金の特徴は、年金資産を加入者が自己の責任において運用の指図を行い、その結果の損益に応じて年金額が決定されることです。
なぜ今確定供出年金なのか
現行の企業年金制度は中小零細企業や自営業者に十分普及していない。
離転職時の年金資産の持ち運びが十分確保されておらず、労働移動への対応が困難。
改正確定拠出年金法が平成29年1月より実施され、加入者の範囲などが広くなります。(個人型の場合、公務員や第3号被保険者などが加入できます。)
(1)企業型年金
実施主体:企業型年金規約の承認を受けた企業
掛金の拠出:事業主が拠出(規約に定めた場合は加入者も拠出可能)
拠出限度額 1.厚生年金基金等の確定給付型の年金を実施していない場合:55,000円(月額)
2.厚生年金基金等の確定給付型の年金を実施している場合:27,500円(月額)
尚、拠出した金額は所得税と市民税等が非課税扱いです。
(2)運用
1.運用商品の中から、加入者等自身(従業員等)が運用指図を行います。
2.運用商品は、預貯金、公社債、投資信託、株式、信託、保険商品等となっています。
3.運用商品を選定・提示する者は、必ず3 つ以上の商品を選択肢として提示することとなっています。選定する商品は1つでも可です。
(3)離転職の場合等の年金資産の移換
1.資産残高(掛金と運用収益の合計額)は個々の加入者等ごとに記録管理されており、資産額等の記録が年1回以上通知されることになっています。
2.加入者等が転職した場合等には、退職して国民年金の加入者となった場合等には個人型年金へ、転職した場合は転職先の企業型年金へ資産を移換することができます。
(4)給付
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老齢給付金 |
障害給付金 |
死亡一時金 |
脱退一時金 |
給付 |
5年以上の有期又は終身年金(規約の規定により一時金の選択可能) |
5年以上の有期又は終身年金(規約の規定により一時金の選択可能) |
一時金 |
一時金 |
受給要件等 |
原則60歳到達した場合に受給することができる(60歳時点で確定拠出年金への加入者期間が10年に満たない場合は、支給開始年齢を引き伸ばし) 8年以上10年未満→61歳 |
70歳に到達する前に傷病によって一定以上の障害状態になった加入者等が傷病になっている一定期間(1年6ヶ月)を経過した場合に受給することができる |
加入者等が死亡したときにその遺族が資産残高を受給することができる |
一定の要件を満たした場合に受給することができる |
(5)税制について
拠出時:非課税(事業主が拠出した掛金額は、全額損金算入・加入者が拠出した掛金額は、全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除))
運用時:特別法人税課税(平成28年度まで凍結)
給付時:1.年金として受給:公的年金等控除(標準的な年金額までは非課税)
2.一時金として受給:退職所得控除
よい人材を採用するには
少子・高齢化の進展によって就労人口が減少しています。東京オリンピックが開催される2020年(平成32年)を境に急激に進行するといわれています。
今後、会社が生き延びていくためには、よい人材をいかに採用していくかがカギとなります。
一方、就職・転職する人達は、よりよい条件の会社に応募して入社したいと思っています。
また、前の勤務先で確定拠出年金制度のある会社で加入していた方は、次の会社でもやはり確定拠出年金制度のある会社に就職したいと思っているはずです。
公的年金(老齢基礎年金と老齢厚生年金)だけでは老後の生活をまかなっていくことはできない時代になりつつあります。
自分年金という意味で確定拠出年金は重要な制度となっていきます。税制面で特別の優遇制度も用意されています。
中小企業といえども、中途採用にあっては、確定拠出年金制度の有無が重要なポイントとなります。
確定拠出年金を導入すると何が特になるのか
確定拠出年金を導入すると税金が安くなります。(企業型年金の場合)
① 所得税・住民税
確定拠出年金は、毎月決まった金額を掛け金として給与から天引きされます。この給与から天引きされる掛金が全額非課税となります。
所得税は、所得が大きくなるほど税金の率も高くなります。
確定拠出年金は、天引きされた掛金を差し引いた所得を元に所得税を計算します。
また、住民税も所得が対象になるので、計算の元になる所得が、確定拠出年金の天引き額分だけ圧縮され、住民税が翌年から減少します。
② 運用益も非課税
確定拠出年金は、運用によって得た利益についても、運用期間中、全額がずっと非課税となります。
通常の運用では、運用益に対して20%課税されますが、これが非課税となるのです。
③ 老後に受け取る時も、税金が優遇される
確定拠出年金を年金で受け取る際、年金に関わる控除は、公的年金控除と同じ扱いとなり優遇されています。
確定拠出年金を導入する会社にもメリットあり
① 社会保険料の軽減
会社が確定拠出年金を導入した場合、給与から天引きされる掛金分だけ、社会保険料を計算する根拠になる報酬額を下げることができます。
(標準報酬月額相当額の等級が下がると適用となります。算定基礎届の場合は、10月から、2等級以上下がった場合は、月額変更届を提出してからとなります。)
確定拠出年金の運用商品のメリット
確定拠出年金(会社が入っている場合)では、会社が選んだ金融機関が用意した運用商品の中から、自分自身で選んで運用します。
確定拠出年金を運用する金融機関(運営管理機関といいます)が提供する運用商品の中に、一般に個人向けに販売されている運用商品よりも手数料の安いものが用意されていることがあります。
特に投資信託の外国株式のインデックスファンドは、手数料が安くなっています。
もし私が確定拠出年金に加入できて投資信託の毎月積み立てができるならば(残念ながら私は60歳を過ぎているので確定拠出年金には加入できない)、ぜひ買いたい商品です。
投資信託の手数料は、運用している期間中、ずっと払い続けることになりますので、少しでも安い方が投資においては有利です。
積立期間が長くなると、手数料が安いのはとてもメリットがあります。
確定拠出年金の利用法
確定拠出年金の掛金は、自分の会社の給料の中から拠出可能な最大限度額で利用することをお勧めします。
会社が確定拠出年金に加入しているならば、拠出金額が選択可能な場合、生活と両立できる範囲でできるだけ最大限の金額を設定しましょう。
私の事務所が確定拠出年金の導入をお手伝いしている総合型確定拠出年金は、1年に1回拠出額の変更が可能となっています。
生活の余裕のある時は、最大限度額まで、生活が苦しくなってきたら少し下げるようにすればいいと思います。
老後の生活費は、公的年金(老齢基礎年金や老齢厚生年金など)では、まかなきれなくなってきます。
支給開始年齢も今後65歳を超えて、70歳ぐらいまで上がっていくと思われます。また年金支給額の減額も想定されます。
日本は、少子高齢化が世界で一番進んでいる国です。また、併せて人口減が急激に進んでいます。
自分年金を積み立てる意味でも確定拠出年金は、とても有利な制度です。 拠出できる金額は最大限可能な額を設定しましょう。
確定拠出年金の所得控除、県市民税控除と運用途中の運用益の非課税は絶対的に有利になっています。
確定拠出年金の運用商品は、手数料の安い、国内外の株式に投資するインデックス・ファンドに投資するのがベストです。
日本は、今後少子高齢化と人口減で成長は鈍化すると言われています。できれば、日本株式に投資するインデックス・ファンドよりも外国の株式に投資するインデックス・ファンドの比率を上げるのが一番だと思っています。
また、運用商品がいくつかある場合は、手数料の低いものを選ぶのが鉄則です。
移換前の種別
企業型年金の場合
退職して国民年金3号被保険者になった |
運用指図者になる |
公務員に転職した |
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転職先の会社に確定拠出年金以外の企業年金制度がある |
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退職後、国民年金1号被保険者(自営業・無職等)になった |
個人型確定拠出年金または運用指図者になる |
転職先に確定拠出年金制度も他の企業年金制度もない |
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転職先に確定拠出年金制度があり加入できる |
企業型確定拠出年金 |
個人型の場合
就職・転職先に確定拠出年金制度があり加入できる |
企業型確定拠出年金 |
就職・転職先に確定拠出年金制度も他の企業年金制度もない |
個人型加入者のまま移換手続きは不要 |
退職後、国民年金1号被保険者(自営業・無職等)になった |
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転職先の会社に確定拠出年金以外の企業年金制度がある |
運用指図者になる |
公務員に就職・転職した |
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国民年金3号被保険者になった |
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単に運営管理機関を変更したい |
個人型加入者のままだが移換手続きは行う |
運用指図者の場合
就職・転職先に確定拠出年金制度があり加入できる |
加入者として拠出再開 |
新たに個人型確定拠出年金の加入資格を得た |
加入者として拠出再開 |
他の企業年金加入者の場合
確定拠出年金以外の企業年金加入者からの移換 |
企業型または個人型の確定拠出年金の加入者になる |