自動車保険とは
文責 FP2級技能士 松井 宝史 2021.05.24
自動車保険(任意保険)の内容
自動車保険(任意保険)には、担保される内容に応じて次のようなものがあります。
対人賠償保険
自動車の「所有、使用または管理」に起因して他人の生命または身体を害し、被保険者が法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害を填補する保険が対人賠償保険です。
対人賠償保険は、損害額が自賠責保険で支払われる金額を超過する場合に、その超過分を填補するものであり、「上積み保険」または「上乗せ保険」といわれます。
例えば、事故の被害者に対し自賠責保険から120万円支払ったが、それだけでは足らず、なお350万円を損害賠償として支払うべき場合がこれにあたります。
対人賠償保険では、損害賠償額が確定したときなど一定の要件を満たした場合に、被害者の保険会社に対する直接請求権が認められています。
また、保険契約者・被保険者の故意によって発生した損害など一定の場合には、保険金が支払われません。
この保険の被保険者は、次の通りです。
① 保険証券に記載された記名被保険者
② 被保険自動車を使用または管理中の者で、記名被保険者の配偶者、記名被保険者またはその配偶者の同居の親族、記名被保険者またはその配偶者の別居の未婚の子、のいずれかに該当する者
③ 記名被保険者の承諾を得て被保険者自動車を使用または管理中の者
対物賠償保険
自動車の「所有、使用または管理」に起因して他人の財物を滅失、破損または汚損したため、被保険者が損害賠償責任を負担することによって被る損害を填補する保険が対物賠償保険です。
例えば、交通事故を起こして相手の自動車を破損させたときに、その修理費などを支払うものです。
被保険者の範囲は、対人賠償保険と同じです。
人身傷害保険
被保険者が、被保険自動車や他の車両の登場中あるいは歩行中に、①自動車の運行に起因する事故、②被保険自動車の運行中の、飛来若しくは落下してきた物との衝突、火災、爆発または被保険自動車の落下のいずれかに該当する急激勝つ偶然な外来の事故により傷害を被ることによって、被保険者またはその父母、配偶者もしくは子が被る損害を填補する保険が人身傷害保険です。
②の場合は、「自損事故保険」、「無保険者傷害保険」および「搭乗者傷害保険」の場合と同様、被保険者が被保険自動車の正規の乗車装置または当該乗車装置のある室内に搭乗中であることが支払い条件とされています。
人身傷害保険は、被保険者が被る損害に対して、自分が契約している保険会社から支払われるものです。そして、仮に被害者たる被保険者に過失相殺事由があっても、保険会社が算定する損害額全額について、保険金の支払を受けることができるという特徴があります。
ただ損害額を算定するための基準は、それぞれの保険会社に任されており、いわゆる日弁連基準を下回る内容のものとなっています。
自損事故保険
被保険者が、①被保険自動車の運行に起因する事故、②被保険自動車の運行中の、飛来もしくは落下してきた物との衝突、火災、爆発または被保険自動車の落下、のいずれかに該当する急激かつ偶然な外来の事故により身体に傷害を被ったが、その損害について運行供用者責任を加害者に問うことができない場合に損害を填補する保険が自損事故保険です。
この保険の目的は、自賠責保険または政府保障事業のいずれによっても損害の填補が受けられない者に対し、補償を与えることにあります。
例えば、自動車を自分で運転していた者が、運転操作を誤って電柱に激突し、後遺障害を負ってしまったような場合がこれに該当します。
自損事故保険の特徴は、自賠法3条に基づく損害賠償責任が発生しないことを支払責任の発生要件としている点です。つまり、被害者が受けた損害について、賠償請求できる相手がどこにもいない場合に機能する保険です。
また、定額給付方式の保険です。
無保険車傷害保険
被保険者が無保険自動車の所有、使用または管理に起因する事故で死亡したり、後遺障害を負った場合に、被保険者またはその父母、配偶者もしくは子が被る損害を填補するのが無保険車傷害保険です。
無保険自動車とは、①相手自動車に対人賠償保険が付いていない場合、②相手自動車に対人賠償保険が付いていても、その保険金を受け取ることができない場合、③相手自動車の対人賠償保険の保険金額が、被保険自動車の保険証券記載の保険金額に達しない場合、④相手自動車が不明の場合のいずれかをいいます。
保険金額は、対人賠償保険の保険金額と同じです。
ただし、対人賠償保険金額が「無制限」になっていても、約款で上限が2億円に制限されます。
なお、自賠責保険や政府保障事業により損害の填補が受けられる場合は、その金額が控除され、超過額のみが保険金として支払われます。
搭乗者傷害保険
被保険自動車に搭乗中の者が、①被保険自動車の運行に起因する事故、②被保険自動車の運行中の、飛来もしくは落下してきた物との衝突、火災、爆発または被保険自動車の落下、のいずれかに該当する急激かつ偶然な外来の事故により身体に傷害を被った場合に、保険金を支払うのが搭乗者傷害保険です。
ここでいう被保険者とは、被保険自動車に搭乗中の保有者、運転者、および同乗者すべてを含みます。
定額給付方式の保険ですので、自賠責保険、任意対人賠償保険、社会保険給付などと重複して給付を受けることができます。
車両保険
衝突、接触、墜落、転覆、物の飛来・落下、火災、爆発、盗難、台風、洪水その他の偶然な事故によって被保険自動車に生じた損害を被保険者(被保険自動車の所有者)に対し填補するのが車両保険です。
例えば、運転を誤って被保険自動車を電柱に衝突させ、同車が破損した場合に、その修理費を支払ってもらう場合がこれに該当します。
ただし、タイヤの磨耗、部品の消耗、車体に自然に生じたさびなど自動車の正常な使用によって生じる劣化現象は、偶然な事故に該当しないので損害填補の対象となりません。
なお、被保険自動車が全損となった場合、「車両価額協定保険特約」が付されている場合には、被保険自動車と同等の自動車の市場販売価格相当額を被保険自動車の価額と定め、これを保険金額とします。
FP松井宝史