労災保険の基礎知識

労働者災害補償保険の保険給付の種類(業務災害)

第十二条の八 第七条第一項第一号の業務災害に関する保険給付は、次に掲げる保険給付とする。

一 療養補償給付

二 休業補償給付

三 障害補償給付

四 遺族補償給付

五 葬祭料

六 傷病補償年金

七 介護補償給付

② 前項の保険給付(傷病補償年金及び介護補償給付を除く。)は、労働基準法第七十五条から第七十七条まで、第七十九条及び第八十条に規定する災害補償の事由又は船員法(昭和二十二年法律第百号)第八十九条第一項、第九十一条第一項、第九十二条本文、第九十三条及び第九十四条に規定する災害補償の事由(同法第九十一条第一項にあつては、労働基準法第七十六条第一項に規定する災害補償の事由に相当する部分に限る。)が生じた場合に、補償を受けるべき労働者若しくは遺族又は葬祭を行う者に対し、その請求に基づいて行う。

③ 傷病補償年金は、業務上負傷し、又は疾病にかかつた労働者が、当該負傷又は疾病に係る療養の開始後一年六箇月を経過した日において次の各号のいずれにも該当するとき、又は同日後次の各号のいずれにも該当することとなつたときに、その状態が継続している間、当該労働者に対して支給する。

一 当該負傷又は疾病が治つていないこと。

二 当該負傷又は疾病による障害の程度が厚生労働省令で定める傷病等級に該当すること。

④ 介護補償給付は、障害補償年金又は傷病補償年金を受ける権利を有する労働者が、その受ける権利を有する障害補償年金又は傷病補償年金の支給事由となる障害であつて厚生労働省令で定める程度のものにより、常時又は随時介護を要する状態にあり、かつ、常時又は随時介護を受けているときに、当該介護を受けている間(次に掲げる間を除く。)、当該労働者に対し、その請求に基づいて行う。

一 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)第五条第十一項に規定する障害者支援施設(以下「障害者支援施設」という。)に入所している間(同条第七項に規定する生活介護(以下「生活介護」という。)を受けている場合に限る。)

二 障害者支援施設(生活介護を行うものに限る。)に準ずる施設として厚生労働大臣が定めるものに入所している間

三 病院又は診療所に入院している間

解説

業務上の事由による負傷、疾病、障害、死亡の場合に支給される保険給付には、以下のものがあります。

治療を受けたとき・・・療養補償給付

療養中の生活費・・・休業補償給付または傷病補償年金

障害が残ったとき・・・障害補償給付

要介護状態になったとき・・・介護保障給付

死亡したとき・・・遺族補償給付葬祭料

 

ひとつずつ見ていきましょう。

療養補償給付

業務上の疾病が発生したとき、労働者は労災指定病院等において無料で療養を受けることができます。

このときかかった治療費は、病院から保険者である政府に直接請求されます。

つまり労働者は、治療という現物給付を受けるかたちになり、現金での給付は行われません。

ただし、当該地区に指定病院がない場合や、緊急な治療を必要とするために最寄りの指定病院でない病院で治療を受けた場合などのやむを得ない事情がある場合は、療養の費用の支給が行われます。

 

休業補償給付

業務上の傷病の療養のために休業する間、労働者の生活を補償するための制度です。

以下の3つの要件をすべて満たした場合に労働者の請求に基づき、休業1日につき給付基礎日額の100分の60に相当する額が支給されます。

1.業務上の傷病により療養中であること

2.療養のために働くことができないこと

3.賃金を受けていないこと

ただし、休業を開始してから3日間は支給されず(待機期間)、4日目から支給されます。

待機期間の3日間には、土日祝日などの公休日、有給休暇を含みます。

では待機期間の3日間には何の補償も受けられないのかというとそうではなく、待機期間には事業主が休業補償を行うこととなっています。

 

傷病補償年金

業務上の傷病により療養を開始して1年6か月を経過したときに、傷病が治っておらず、かつ当該傷病による障害の程度が傷病等級に該当する場合、休業補償給付から切り替えて傷病補償年金が支給されます。

傷病補償年金の額は、以下の通りです。

第1級・・・給付基礎日額の313日分

第2級・・・給付基礎日額の277日分

第3級・・・給付基礎日額の245日分

 

障害補償給付

業務上の傷病が治ったときに身体に障害が残った場合、障害補償給付が行われます。

障害等級第1級から第7級に該当する場合は障害補償年金が、第8級から第14級に該当する場合は障害補償一時金が支給されます。

<障害補償年金の額>

第1級・・・給付基礎日額の313日分

第2級・・・給付基礎日額の277日分

第3級・・・給付基礎日額の245日分

第4級・・・給付基礎日額の213日分

第5級・・・給付基礎日額の184日分

第6級・・・給付基礎日額の156日分

第7級・・・給付基礎日額の131日分

 

<障害補償一時金の額>

第8級・・・給付基礎日額の503日分

第9級・・・給付基礎日額の391日分

第10級・・・給付基礎日額の302日分

第11級・・・給付基礎日額の223日分

第12級・・・給付基礎日額の156日分

第13級・・・給付基礎日額の101日分

第14級・・・給付基礎日額の56日分

 

 

介護保障給付

障害補償年金または傷病補償年金を受ける権利を有する労働者が、常時または随時介護を要する状態であり、また実際に常時または随時介護を受けているとき、介護保障給付が支給されます。

(障害補償一時金の受給権者は対象外です。)

ただし、障害者支援施設、特別養護老人ホーム、原子爆弾被爆者特別養護ホーム、病院または診療所に入所、入院している間は支給されません。

 

遺族補償給付

労働者が業務災害により死亡したとき、遺族に対して行われる給付です。

遺族補償年金と、遺族補償一時金の2種類があります。

原則としては遺族補償年金が支給されますが、遺族補償年金を受けることのできる遺族がいない場合等は、遺族補償一時金が支給されます。

遺族補償年金を受ける権利がある遺族は、以下の順序による最先順位者です。

1.妻または60歳以上又は一定の障害の状態にある夫

2.18歳年度末までの間又は一定の障害の状態にある子
3.60歳以上又は一定の障害の状態にある父母
4.18歳年度末までの間又は一定の障害の状態にある孫
5.60歳以上又は一定の障害の状態にある祖父母
6.60歳以上、18歳年度末までの間又は一定の障害の状態にある兄弟姉妹
7.55歳以上60歳未満の夫
8.55歳以上60歳未満の父母
9.55歳以上60歳未満の祖父母

10.55歳以上60歳未満の兄弟姉妹

 

また、遺族補償年金の額は、受給権者および受給権者と生計を同じくしている受給資格者が何人いるかによって決まります。

遺族が1人のとき・・・給付基礎日額の153日分(55歳以上の妻または障害の状態にある妻にあっては175日分)

遺族が2人のとき・・・給付基礎日額の201日分

遺族が3人のとき・・・給付基礎日額の223日分

遺族が4人以上のとき・・・給付基礎日額の245日分

 

葬祭料

労働者が業務上の事由により死亡した場合に、葬祭を行う者に対して支給されます。

(「葬祭を行う者」は遺族補償給付の受給権者である必要はありません。)

支給額は、315,000円に給付基礎日額の30日分を加えた額か、給付基礎日額の60日分のいずれか高い方とされています。


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