相続・遺言の豆知識

相続対策について

文責 FP2級技能士 松井 宝史 2021.05.05

相続財産はどこ

ご自身の保有財産について、生前に保有財産の一覧表を作成し、年1回程更新しておくことをお勧めします。

誕生日や正月休みのときなど、更新する日を決めておくのもよいでしょう。

預貯金意外の財産、例えば上場株式や投資信託なら、時価を確認すると同時に運用の見直しを行うことができます。

生命保険なら、その時点でも家族構成や必要性に応じて保障の範囲を見直すことができ、財産管理の面からも望ましいといえます。

不動産も、購入したときの金額は覚えていても、現在の市場価格や固定資産税評価額を把握している方は少ないので、確認しておきましょう。

預貯金は、ペイオフ対策意外の理由で多くの金融機関に口座を保有している場合、不必要な口座は解約しておきます。

残高が数百円しかなくても解約手続きには手間がかかるからです。

また、税務上は、本人だけでなく配偶者や子供名義の預金や株式も大きな問題になります。

配偶者の方自身が働いて貯めたお金や、実家から相続したお金意外は、亡くなった人の財産とみなされる可能性がありますので、念のため一覧表にも載せてください。

その後、一覧表を基に、誰に何を相続させるのか、もらう方はどう思うか、考えてみてください。

自宅など分けられない財産の占める割合が高い場合、生前に何らかの対応をしておかないと後でもめることは目に見えています。

相続財産や遺言書の調べ方

亡くなった人が取引をしていた銀行・証券会社・保険会社などが不明なとき、相続人1人からの申し出でも、口座の有無の確認や残高証明書の発行には応じてもらえます。

ただし、生前の預金の引き出しに関し相続人間でもめていて、過去の取引明細を金融機関に開示してほしいとき、判例では相続人単独でも認められているのですが、断られることがあります。

また遺産分割協議が整う前に、自分の法定相続分だけを払い戻したいときも、法律上は可能なので、訴訟を起こせばしてもらえるのですが、実務上は銀行が責任を問われることを避けるため、してもらえないようです。

相続財産を調べるには、まず預金通帳、株券、証書、不動産の権利証など、財産そのものに結びつく現物を捜します。

金融機関から郵送される預かり資産や年間取引の明細からは、金融資産の所有状況がわかります。

市区町村から毎年4月頃送付される固定資産税の納付通知書からは不動産の所有状況が把握できます。

その他、預金通帳の入出金の記録そのものも相続財産を捜す手がかりになります。

もし、貸金庫の利用料が引き落とされていれば、貸金庫を借りているはずです。生命保険の保険料の支払いがあれば、生命保険への加入、配当金や利息の入金があれば株式や債券の保有の可能性があります。

借入金返済の記録があれば、急いで借入金の残額を確認しなければなりません。

所得税の確定申告をしている人なら、過去の申告書からも所有財産について推測することができます。

また、遺言書は法定相続に優先しますので、その有無も確認しなければなりません。財産は亡くなった人の意思である遺言に従って分けるのが原則です。

遺言書はそれを書面にしたものです。

公正証書遺言は、コンピュータで一括登録されています。

最寄の公正役場に問い合わせれば確認できます。

自筆証書遺言は、相続財産の現物を捜すのと同じ要領でひたすら捜すしかありません。

預金口座の凍結対策

銀行は、預金者の亡くなった事実を知った時点で口座を凍結します。

役所へ提出した死亡届が回付されるわけではないのですが、その後一切、預金は引き出せません。

通常、銀行は相続人全員の実印が押印された手続き書類や、戸籍、遺産分割協議書などの必要書類がそろわない限り、原則的に預金の引き出しを認めていません。

但し、2019年7月より、預金の払い戻し制度が始まりました。

これにより、相続発生後に凍結されてしまう預金口座については、相続人の同意がなくても一定の金額を払戻すことができるようになりました。

これは、ある相続人が亡くなった人の預金を勝手に引き出した後に、別の相続人がこの口座を相続することになったときなどに、銀行が相続トラブルに巻き込まれるのを避けるためです。

相続発生後に、当面の現金が手元になく困ることを避けるため、亡くなる直前か亡くなったことを銀行が知る前に、多少の現金を引き出しておくこともやむを得ず必要です。

この場合、あとでその引き出しや使途について相続人間でトラブルにならないよう、領収書を保管しておくか、引き出したお金の使い道をメモしておいた方がよいでしょう。

実家の分け方

一般的に、相続税のかからない相続の場合、一番の問題が自宅と介護です。

相続財産は自宅と少しの預金のみ、金額にして3,000万円~8,000万円くらいというケースです。この相続がとにかく一番もめるのです。老いた親の介護の問題もありますが、この親が亡くなったとき、自宅をどうやって相続するかがとても大きな問題になります。

不動産が財産の大半を占めているとき、相続人が法定相続割合通りに、財産を現物で取得することはまず不可能です。売却しその代金を均等に分けてもよいのですが、都内の一等地でもない限り、希望通りの価格で売却できるとは限りません。

また、不動産が親の自宅で、子供のうち1人だけが親と同居していたとき、土地の所有者は父でも家を子供の資金で二世帯住宅などに建て替え、建物は子供の名義になっていることがあります。この場合、自宅は子供の生活基盤にもなっているため、そう簡単に売却することもできません。

同居している子供が単独で自宅の土地を相続する代わりに、他の相続人に対し、法定相続分を現金でわたすことができればよいのですが、通常、それだけ多額の現金を支払う金銭的な余裕はありません。

かといって、不動産を現物のまま共有名義で相続することは、後々の利用や処分が困難になるだけなので、ほとんどの場合は望ましくないのです。

さらに、法定相続分は兄弟間では平等とはいえ、つきっきりで介護をした子供と、まったくしていない子供が同じ相続分でよいのかという問題があります。

戦前の旧民法の考え方は、長男が家督と財産すべて相続する代わりに、親の面倒をみることが暗黙の了解でした。一方、戦後の新民法では、兄弟で均分相続、全員平等の権利を有するという考え方となっています。介護については、旧民法通り長男の義務であり、相続については、新民法通り兄弟平等の権利という主張が正しいとはいえないと思います。

現物分割・代償分割・換価分割

遺産分割には、3つの方法があります。

「現物分割」とは、土地は配偶者、預金は長男というように、財産をそのままの形で分ける方法です。

「換価分割」とは、財産を売って、その売却代金を分ける方法です。

「代償分割」とは、現物で分けるのが難しい財産があるとき、その財産を取得した相続人が他の相続人に対し、多く相続した分を金銭(代償金といいます)で支払う方法です。

一括で支払うのが原則ですが、分割払いも認められています。

親と同居している親族が自宅を取得する際によく取られる方法です。

共有

相続財産が兄弟同士で均等に分けられないとき、不公平にならないよう、一つの財産を同じ割合ずつ「共有」で相続することがあります。

これも一種の「現物分割」です。

共有とは、一つの財産を「特分」という割合で、複数の人が持ち合うことです。

それぞれの人が、特分割合の範囲で所有することになります。

しかし、共有は単なる問題の先送りです。現在は兄弟仲がよく問題がなくても、その兄弟に相続が起こったときには、いとこ同士の共有になります。

共有人数が増え、権利関係も複雑になるにつれて、将来的には必ず何らかの問題が発生します。

たとえば、共有不動産の売却には全員の同意が必要です。

ただでさえ、単独で所有しているのに比べ特分の処分がはるかにしにくい上に、共有者の関係が兄弟からいとこへと疎遠になっていくと、関係が希薄な分、お互いの事情を理解し合えません。

そのため、共有を解消したくても、話し合いで解決することがより難しくなります。

遺言書の作成

自宅の土地建物が、相続財産の大半を占める場合で、同居している子供に自宅を相続させたいときには、遺言書を作成しておく必要があります。

例えば、父が遺言書を作成し、自宅の土地4,000万円を長男に、銀行預金を1,000万円ずつ、次男と三男に相続させるとしておいたときには、次男と三男の遺留分(相続財産6,000万円×法定相続割合1/3×遺留分1/2=1,000万円)は侵害されていないため、長男は何の問題もなく単独で、自宅の土地を相続することができたのです。

また、あまり知られていませんが、遺言書があっても、相続人全員で話し合って合意できれば、遺言書と異なる遺産分割をすることも可能です。

必ずしも遺言書の指示通りに分けなければいけないわけではないのです。

生命保険の活用

生命保険の活用は、相続対策の有効な手段の一つです。ポイントは、特定の相続人が保険金受取人に指定されているときには、生命保険は相続財産ではない点です。保険金受取人固有の財産になるので、遺産分割の対象にも、遺留分の対象にもなりません。

そのため、相続放棄をしていたとしても、保険金を受け取ることができます。

生命保険には、その他の利点もあります。銀行預金は、遺産分割協議の成立後でないと引き出しができませんが、保険金は相続財産ではないので、相続が発生した後、受取人が単独で保険会社に支払請求を行い、通常はその後2週間から1ヵ月程度で受け取ることができます。

また、相続税の計算上、生命保険金の受け取りは、500万円×法定相続人の数の金額までは非課税です。法定相続人が3人の場合、1,500万円までは非課税なので、相続税の基礎控除額を超える財産があるときには、現金で1,500万円を残すと相続税がかかりますが、同額を生命保険金として残せば、相続税がかからないのです。

財産の組み換え

生前のうちに、できるだけ所有している財産を預貯金や上場株式などの分けやすく換金しやすい財産に組み替えておくことも必要です。

また、自宅は売るにしても誰かに貸すにしても、立地や建物の仕様がよほどよくないと希望通りの価格では難しいでしょう。

これからは自宅が余る時代なのです。

やっとの思いで手に入れたマイホームを手放すのは、心情的には難しい選択です。

しかし自宅は子供同士で分けられない財産、もめる財産の典型です。もし、子供に残すメリットがなければ、たとえば地方都市の駅から離れた一戸建てから、駅近のコンパクトなマンションへの住み替えを検討するのも対策の一つです。

自分が老いて体が不自由になっても、病院への通院や介護を受けるのに便利です。

また、相続財産として子供に残した場合でも売却や賃貸がしやすくなります。

介護してくれる人にあげたい

相続税のかからない相続の場合、もめる最大の原因は自宅と介護です。

両親が同時に亡くなることはめったにありません。

元気なうちは残された親が1人暮らしていても、除所に同居や介護の問題が現実味を帯びてきます。

例えば、父の死後は、母の介護が問題となります。

長女と一緒に母の妹である叔母が親の面倒をみていくことがあります。

子供が親の面倒をみるとは限りません。家庭の事情や経済的な問題から、みることができないこともあります。

その一方、親の世代は兄弟の人数も多く、仕事も定年退職して子供も独立し、時間的余裕があります。

そのため、兄弟や姉妹同士で介護を行うケースが増えています。

上記の例では、父も財産はまず母に、その後は独身の娘と世話になった叔母に渡したいという意向がありました。

既に長男は自分の妻の両親と二世帯住宅を建てて同居しており、実家に戻ることも母の面倒を見ることも現実的には不可能です。

財産は気持ち程度、わたせば十分だと思われます。

しかし法定相続人がいる場合、遺言書がない限り、法定相続人ではない叔母は財産を取得できません。

相続分の譲渡という方法もありますが、一般的ではありません。

父の看病や母の介護にどう報いるかという点では、長女は相続人のため貢献の度合いが寄与分として認められ、長男より多く財産を受け取れる可能性がありますが、相続人ではない叔母にはそれもありません。

寄与分

寄与分とは、相続人の中に、亡くなった人の事業に無報酬で従事していたりお金を出したりして事業の発展に努めた人、又は介護をした人がいて、財産の維持や増加に大きく貢献したとき、その相続人に対し、法定相続分とは別枠で認められた取り分のことです。

相続財産からこの寄与分を先に控除し、残った財産を法定相続分に従って相続人で分けるので、寄与した人はその分多く財産を相続できます。

しかし、寄与分は相続人にしか認められないので、相続人意外の人の貢献には報いることができません。

寄与分の金額は、まず相続人同士が話し合い、遺産分割協議で決めることになっています。

しかし、寄与分を認めれば、他の相続人は自分の取り分が減ってしまいます。金額をいくらに見積もるのかの算定根拠もありませんので、話し合いで決めるのは非常に難しいのです。

相続人間で合意できない場合には、家庭裁判所での調停・審判で決めることになります。

寄与分として認められるためには、「特別な」貢献である必要があり、介護などが親子の扶養義務の範囲内の行為であるとされたときは、寄与分が認められないこともあります。

介護費用の使い道

自宅で介護をしても、施設へ入居しても、介護期間が長くなるとかなりの費用がかかります。

母が、父の介護で父のお金を使っても、普通子どもは文句を言いません。

しかし、子どもが親の介護をする際、親の預金口座から使った介護費用については、後々、他の子どもからその使途や金額について「本当に介護に使ったのか」「他のことに使ったのではないか」「そもそもこんなに介護費用を使う必要があったのか」などと言われ、もめることがあります。

遺産分割協議を始める以前に、介護した人の心を踏みにじるような一言で話し合いが紛糾し、その結果、遺産分割どころか、兄弟の縁が切れてしまうこともあるのです。

同居している子どもが、本当に親のお金を使い込む場合もあるかもしれませんが、実際にはまれです。

病院やヘルパーさんへの支払い、薬代や送り迎えのタクシー代、自宅の改築費用や介護用品の購入など、介護に際し、お金は湯水のように出て行きます。

日常生活に介護が加わることによる忙しさや疲れなどの苦労は、実際に介護をした人でないとわかりません。

そのような日々の中、家計のお金と介護のお金を完全に分けることはとても手間がかかり難しいといえます。

しかし、将来のもめごとを避けるため、介護費用はできるだけ記録を残しておきましょう。

介護費用専用の銀行口座を作り、兄弟同士同意の上、親の口座から預金の一部を移します。通帳には引き出し日と金額の記録が残ります。

そこから支払った介護費用の領収書はすべて保管し、行った場所や払った相手など出来る限りメモしておきましょう。

死亡退職金の考え方

死亡退職金が相続財産に含まれるかどうかは、受取人が指定されているかどうかによります。

会社の就業規則などで、受取人と定められている者が受け取るとき、死亡退職金は相続財産ではなく、その受取人固有の財産とされており、遺産分割の対象にも遺留分の対象にもなりません。

これは、死亡退職金は、遺族の生活保障的な意味合いが強いこと、通常、配偶者が受取人の第一順位に指定されていること、などの理由からだと考えられます。

一方、受取人が定められていないときには、退職金の請求権は亡くなった人がいったん取得し、それを相続人が引き継ぐことになるので、相続財産に含まれるとされています。

ただし、特別受益の持戻しの考え方には注意が必要です。

負担付遺贈の遺言書作成

遺言書がない場合、相続人同士が話し合い、財産を分けることになります。

その場合、相続人全員が法定相続分の相続を主張する可能性がありますし、そもそも相続人意外の人は財産を取得することができません。

介護した相続人に多めに財産をわたしたいときや、相続人ではない人へ財産をわたしたいときには、必ず遺言書が必要です。

例として、父が母にすべての財産をわたし、その後母が亡くなるときには、息子と娘のうち、面倒をみてくれた娘だけに財産をわたしたいときには、どうしたらよいでしょうか。

この場合、父が

①「負担付遺贈」の遺言書を作成する

②「負担付死因贈与」の契約書を生前に娘と結ぶ

のどちらかを行えば、同じ効果が得られます。「負担付」とは、財産をもらう人に、財産の全額を限度として、一定の義務を課すことです。

① は、財産をもらう人に、一定の義務を負担させることを条件に、財産をわたす遺言のことです。

②は①と同じ内容の契約をわたす人が生きているうちに結ぶことです。

父がこの方法をとっていれば、母の面倒をみる約束で娘に財産をわたすことができました。

負担付ではない普通の遺言で、長女に財産を多くわたしても、母の面倒をみないかもしれません。

かといって、父が母に財産を多くわたすと、母が遺言書を書かない限り、母の相続では財産は息子と娘が均分相続することになってしまいます。

① と②は次の点で異なります。

① の「遺贈」はあげる人からの一方的な意思表示です。上げる人は遺言書を書き換えれば、いつでも自由に取り消すことができます。

また、もちろんの意思は反映されていないので、もらう人も、財産をもらい義務を実行することを拒否することができます。

② の「死因贈与」は、両者の合意に基づく契約なので、履行される確実性が高いといえます。

また、もらう人は、財産が不動産等のときにはあげる人の承諾を得れば、生前に所有権移転の仮登記を行うこともできるのです。

養子縁組

養子縁組とは、血のつながりのない者同士の間に、人為的に親子関係を作り出す法律上の手続きをいいます。民法上、目上の親族(おじやおば)や年上の者(兄や姉、その他自分より年齢が上の人)は養子にできませんが、それ以外の人は可能です。

父と叔母は義理の兄弟(兄と妹)です。叔母が父より年下なら、母の同意があれば市区町村に届け出るのみで、養子縁組は可能でした。

以前は、養子縁組が相続税対策で使われていました。

相続税の計算上、法定相続人を1人増やせば、相続税の基礎控除額が1,000万円増えるからです。

そのため、相続税法が改正され、相続税に計算上、法定相続人の数に含めることができる養子の人数が制限されました。実の子どもがいる場合は1人まで、いない場合は2人までです。

ただし、再婚による連れ後を養子にする場合は、相続税の計算上は養子ではなく実の子どもとして扱われます。

民法上は養子にする人数に制限はありません。

あくまで相続税に計算上の制限であり、実の子どもがいても2人以上と養子縁組をすることは可能です。

遺言書

遺言は、生きている間はいつでも自由に、状況に応じて何度でも作り直すことができます。

そのため、遺言者が亡くなった後、内容のことなる遺言書が2通以上出てくることがあります。

この場合、作成日付の一番新しいもの、つまり一番あとに作成されたものが有効です。

あとの遺言書に前の遺言と異なる内容が記載されていれば、自動的に前の遺言を取り消したことになります。

前の遺言書に記載した内容のうち、あとの遺言書には記載されていないものや、内容が抵触しないものについては、前の遺言書がそのまま有効です。

自筆証書遺言・公正証書遺言などの遺言の方式は、それぞれ異なっていてもかまいません。

遺言者の意思能力

遺言した人が亡くなった後に、その遺言書の有効性、特に遺言者に意思能力があったかについて争いとなることがあります。

公証人は、公正証書遺言の作成の際に、遺言者の意思を確認します。

そのとき、認知症の兆候があったり、言語障害が発生している場合には、遺言者の意思能力の有無や遺言内容を公証人に口頭で話す口述に関して、後に問題になる恐れがあります。

そのため、最近は医療機関などで認知症の程度を測定するために使われている「長谷川式」のテストを行い、特に慎重に判断することが増えているようです。

自筆証書遺言の作成の際には、このような第三者による確認はされていません。

遺言者の意思で自由に、1人で作成できる方式だからです。

そのため、病院のカルテ、看護師の日誌、介護施設の入所記録、介護保険の要介護認定の記録など、遺言者の症状を客観的に記録した資料から総合的に判断されます。

遺言は遺留分に配慮した公正証書遺言で

遺言は遺留分に配慮した公正証書遺言で

財産は亡くなった人の意思である「遺言」に従って分けるのが原則です。法定相続分は、あくまで遺言書がない場合の財産の分け方です。

自筆証書遺言と公正証書遺言は、方式による優劣の差はなく、法定効果は変わりませんが、できるだけ公正証書遺言で作成することをおすすめします。

自筆証書遺言は、要式の不備がよくあります。

署名や作成日付がなかったり、押印がもれていたりすると、遺言書自体が無効になってしまうのです。

公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が関与していますので、記載事項の不備で遺言が無効になることもまずありませんし、遺言書の偽造や紛失の恐れもありません。

遺言者の意思能力も、作成時に一応確認されています。公正証書遺言の作成費用は、財産を受け取る人の人数と財産の金額によります。

遺言書では、財産を誰にどう残すかは自由に決められますが、財産の一部を相続人に残しておく「遺留分」への配慮は必要です。遺言書の内容が遺留分を侵害していても、遺留分の減殺請求をされない限り遺言書自体は有効です。しかし、最低限遺留分のある相続人には遺留分相当額の財産をわたすような遺言にしておいたほうが、相続人同士もめごとが起こりません。

遺言書の作成は、相続争いを避ける最善の策ですが、その遺言書が争いのもとになっては意味がありません。

成年後見制度の利用

高齢になり除々に判断力が衰えてくると、介護費用の支払いや同居親族による財産の管理などの問題が発生します。

これらは相続争いに直結するため、遺言書の作成と共に「成年後見制度」を利用することも選択肢の一つです。

成年後見制度は、判断力が衰えた高齢者を、財産管理や療養介護の面で支援し、保護する制度です。

成年後見制度には、「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があります。

法定後見制度は本人の判断能力が衰えた後に、任意後見制度は判断能力が衰える前に利用するものです。

例えば、自分がまだ元気で何でも判断できる間に、家族、友人、法律関係の専門家で信頼できる人とよく話し合って、任意後見契約を結び、任意後見人になってもらいます。

この段階では契約の効力は生じません。

その後、判断能力が衰えたときには、任意後見人に財産の管理を行ってもらいます。

任意後見人がきちんと財産管理を行っているかどうかは、家庭裁判所が選任した任意後見監督人がチェックしますので、安心です。

FP松井宝史

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